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| 不妊症の原因 排卵因子、男性因子、頚管因子、子宮因子、卵管因子、着床因子 不妊症の検査 基礎体温表(BBTと略します)、精液検査、頚管粘液検査、ヒューナーテスト(性交後テスト;PCTとも言う)、子宮卵管造影(HSGと略します)、通気テスト、通水テスト、腹腔鏡検査 不妊症の治療法 タイミング法、排卵誘発法、人工授精、体外受精 これらについて説明します。 不妊症の原因 排卵因子 これは最も一般的な不妊因子です。しかも最近の排卵誘発剤の進歩で最も治療効果が望めます。要するに排卵があまり起こらないために、妊娠の機会が減っていると言うことです。治療は排卵誘発につきます。排卵誘発法についてはまた説明します。 男性因子 精子が少なかったりいなかったりする場合です。1mlあたりの精子数が1000万を切るようだとやはり通常の性交では妊娠しにくいようです。このような場合は人工授精(英語ではAIHとかIUIという)といって精子を濃縮して子宮の中に注入すると言う方法が良く行われます。それでも妊娠しないようなたとえば1mlあたりの精子数が100万を切るような場合は体外受精をするのが良いでしょう。さらに少ない場合1mlあたりに探してもほとんどいないと言うような場合は顕微受精と言う方法を行います。顕微受精とは精子の1匹を細い針に捕まえて直接卵子の中にいれてしまって受精させる方法です。ちょっと強引な感じがしますが特に問題はありません。精液の中に精子が全くいない場合は睾丸内精子を細い針で刺して採取して顕微受精するという方法もあります。ただし当院では顕微受精は行っていません。 頚管因子 子宮の入り口の部分の頚管と言うところから粘液(頚菅粘液)が出ていて、普段はこの粘液が子宮内への雑菌の進入を防いでいるのですが、排卵前になると水っぽくなってその中を精子は勢い良く泳げるようになります。そのような状態で性交すると精子は腟から子宮の中に入っていき卵管を通って卵管の出口の部分で卵子と受精するのです。しかし頚管粘液が不良の状態では、つまり粘液が水っぽくならずにどろっとした状態では精子は子宮の中に入ることができません。これでは妊娠しませんので、この場合も人工授精をして精子を人工的に子宮の中に注入します。そうすることにより精子は卵子と受精することができるようになります。 子宮因子 子宮筋腫や子宮奇形、子宮内の癒着症(中絶手術や流産手術をした後に子宮内が癒着することがある)があると受精卵の着床が阻害されます。このような状態を子宮因子と言いますが、多くの場合手術が必要です。診断には子宮卵管造影(HSG)というちょっと痛い検査が必要です。子宮筋腫なら筋腫を取る手術、奇形があれば奇形を治す手術、子宮内の癒着症は癒着している部分を切り取る処置をします。 卵管因子 卵管がつまっている場合です。これも子宮卵管造影をすることにより診断できます。原因として最も多いのがクラミジア感染症です。クラミジアはおりものが多くなる程度の病気と思われがちですが、卵管炎を起こすことが多く不妊症の原因としては重要です。クラミジアは若い人に多いので、おりものが多くなったら必ず婦人科へ行きましょう。 着床因子 受精卵が子宮内膜にくっつくことを着床すると言います。いろいろな検査を行っても異常がない状態を原因不明不妊と言いますが多くはこの着床がうまくいってないのではないかと考えられています。それは原因不明不妊の患者さんは体外授精をしても妊娠しにくいことが多いためです。体外受精では受精していることは顕微鏡で確認していますので、それを子宮に戻して妊娠しないと言うのは着床しなかったからと言うことになります。現在のところ人工的に着床させることはできません。 排卵誘発法と体外受精が原因不明不妊の場合に有効であることがわかっていますが、それもなぜ有効なのかはっきりしていません、おそらく単純に受精卵が増えることにより着床の確率が増えているのではないかと思います。それなら体外受精で子宮に戻す受精卵の数をどんどん増やしていけばよいのではないかと言うことになりますが、産婦人科学会では多胎妊娠を避けるために3個以上の受精卵を子宮に戻してはいけないとしています。法的には特に制限はありませんが、一応やらないと言うことになっていますので、当然当院では行いません。 不妊症の検査 基礎体温表 排卵しているかどうかを確認するためには基礎体温表をつける必要があります。基礎体温とは体の動きが一番少ないとき(基礎代謝がもっとも低下した状態)の体温のことです。これは眠りからさめる少し前のレム睡眠期の体温に一致するとされています。しかしレム睡眠期の体温を自分で測ることはできません(なんせ寝ているのですから)、したがって目がさめてすぐに動き出す前に測ることで代用しているのです。夜勤のある看護婦さんなどは夜寝ないので基礎体温がつけられないと言われることがありますが、要するに寝ておきるとき(昼でもよい)に測ればよいのです、3時間以上寝ればおおむね信用できる体温になります。毎日同じ時間にはかる必要はありません。 精液検査 精液を入れるコップをお渡ししますので、自宅で採取してください。2時間以内に持ってきていただいたほうがよいです。禁欲期間は2日間以上にしてください。精液の量と濃度、運動率などを検査します。正常値は精液の量が2ml以上、精子濃度が1mlあたり2000万以上、精子の運動率が50%以上です。これ以下は異常ということになりますが、少ない場合は何回か検査します。 頚管粘液検査(頚管粘液のことをcervical mucus略してCMといいます) まず超音波検査で卵胞がちゃんとできているかどうかを見ます。卵胞ができていて(直径が2cm以上になっている場合卵胞はちゃんとできていると考えられる)排卵が近いと思われる頃に頚管粘液を採取してその量と、のばしたときにどれくらい糸を引くかという牽糸性、熱を加えて乾燥させたときにシダ状の結晶ができるかどうかをみます。明確な正常値というのはありませんが、だいたい0.3ml以上の量があって、のばせば10cm以上糸を引いて、乾燥させると顕微鏡で見ればシダ状の結晶がたくさんある(複数の方向に結晶がのびている)場合は正常といえます。このようにならない場合は頚管粘液不良と言うことになります(CM不良という)。 ヒューナーテスト 頚管粘液を排卵直前もしくは直後くらいに採取します。その前日に性行をしてもらっておきます。顕微鏡で頚管粘液中の精子を見ます。400倍の倍率で見て見える範囲に(1視野という)20匹以上いて直進運動をしていれば正常です。どれくらいなら異常という尺度はありません、たとえばヒューナーテストで全く精子がいなくても妊娠することがあります。しかし、5匹以下でほとんど運動していない場合は異常と判断します。この検査は精子の数より精子が粘液中でどれくらい運動しているかを見る検査です。運動していない、とくにくねくねとその場でのたうつように動くだけで直進運動していない場合は頚管粘液が十分に熟化していない(水っぽくなっていない)事が原因のことが多いようです。逆に全く死んだようになって動いていない場合は精子自体の運動能力に問題があることが多いようです。 子宮卵管造影(HSG;hystero-salpingo-graphy) 子宮に奇形がないかとか、卵管がちゃんと通っているかとか、卵管の出口の周囲に癒着がないかなどがわかる検査です。子宮に造影剤と言う液をいれてレントゲン写真を撮ります(油性の造影剤が一般的ですが、水性の造影剤を使用する施設もあります。油性の方がはっきり見えますが、まれに造影剤が子宮の血管から血液中に入り込み肺塞栓症を起こすことがありますので安全な水性の造影剤を使用することがあるのです。ただし水性の造影剤にはヨードが含まれていることが多く、これが血液中にはいるとショック状態になることがあります。油性の造影剤にもヨードが含まれていますが、水性造影剤のようなショックを引き起こすことはまれの様です。最も安全なのはヨードを含まない水性の造影剤ですが、これは10mlで数万円します、水性造影剤は見えにくいので数万円かけて検査してもよく見えないと言うことがあります。当院では油性の造影剤をレントゲンの透視下に使用しています。透視しながら行いますので、血液中に漏れるようなときは即座に中止します、検査は中途半端になってしまいますが仕方がありません)。施設によっては不妊の治療の最初に行うところもありますが、少々痛みを伴いますので当院では数ヶ月間の排卵周期確認および性交後テストなどで精子に問題がないことを確認した上で行っています。できるだけ痛くないようにしますが、痛かったらごめんなさい。 通気・通水テスト 通気テストは二酸化炭素を子宮の中に注入してそれが卵管から抜けていくかどうかを圧力計を見て判断する検査です。通水テストは二酸化炭素の代わりに生理食塩水を使用します。外来で簡単にできるのでよく行われますが、子宮卵管造影で異常がなければ特に行う必要はないと思います。 腹腔鏡検査 子宮卵管造影で異常があった場合、たとえば卵管周囲の癒着が疑われるときや卵管が閉塞(途中で詰まっている)しているときは腹腔鏡検査をしてどのようになっているのかを実際に見て確認します、さらに可能であればそのまま腹腔鏡下に癒着剥離術や卵管の形成術、また子宮内膜症がある場合はその病巣を電気メスなどで焼いてしまう手術を行います。腹腔鏡手術に関しては別項参照。 治療法 タイミング法 これは排卵のタイミングを正確につかんで性交してもらう方法です。卵胞の成長を超音波で見ていきます。さらに頚管粘液の量と熟化度を見ます。また排卵前になると脳からLHというホルモンが多量に出てきます(LHサージという)、これが排卵のスイッチになります。このLHは尿に排出されるので尿中のLHを測定することにより排卵が近いかどうかを見ることができます。この三つ、つまり卵胞径、頚管粘液、尿中LHを見て、さらに基礎体温の変化をみることによりかなり正確に排卵日を推定することができます。排卵日に性交してもらって翌日にヒューナーテストをします。その約1週間後に着床期の子宮内膜の厚さ(10mm以上あるが望ましい)や黄体ホルモン(卵胞は排卵すると黄色くなって黄体になる、この黄体から黄体ホルモンが出る、黄体ホルモンは着床に深く関与する、この黄体ホルモンにより体温がわずかに上昇する、これが基礎体温の高温相となって現れる)の値の測定(10ng/ml以上あるのが望ましい)を行います。最近はあんまりやりませんが、この時期に子宮内膜日付診という検査をすることがあります。これは着床の頃に特徴的な内膜に変化しているかどうかを実際に採取して顕微鏡で見るのですが、かなり痛いので特別な場合にしかしません。以上のような検査を治療をかねて行っていきます。不妊治療の最も基本という部分です。最低でも2−3ヶ月はタイミング法を行う必要があります。 排卵誘発法 排卵誘発は不妊治療でもっとも良く行われる治療です。排卵誘発法には飲み薬による方法と注射を併用する方法、もしくは注射のみを行っていく方法などがありますが、まず飲み薬で様子を見ることが多いです。注射を多用するほど作用は強力になっていきます、したがって妊娠しやすくなる一方副作用として卵巣がはれたり(卵巣過剰刺激症候群英語で略すとOHSSと言う)、双子や三つ子などの多胎妊娠の危険性が出てきます。いかに多胎妊娠を防ぐか、卵巣がはれない程度にうまく刺激するかが医師の腕のみせどころと言えますが、なかなかうまく行かないことも多いです。とくに多嚢胞性卵巣症候群(PCOSと略して言うことが多いですが)と言う病気(と言うか症候群ですけど)の場合、なかなかちょうどよい数の排卵をしてもらうのが難しくて手を焼きます。飲み薬だけでは排卵しにくいし、かといって注射を使うとたくさんでき過ぎてしまうと言うことになりがちです。また人によっては飲み薬だけでも卵巣がはれたり、多胎妊娠になったりすることがあります。 人工授精 精子が少ない場合や頚管粘液が不良の場合に行います。原因不明不妊(検査でどこも悪くない)の場合にも行うことがあります。詳しくは人工授精の項で。 体外受精 卵管が詰まっていたり、原因不明の不妊や不妊治療が長期間になってきた人に行います。どれくらいからが長期間かというと明確なものはありません、産婦人科学会では体外受精はほかの方法で妊娠しない場合に行うという事になっています。ということは最低でも1年以上の不妊治療の期間が必要と考えるべきでしょう。ただし年齢(たとえば42歳で結婚した場合など1年間はちょっと長い)や環境によってはそれ以前でも体外受精を行わなければならないこともあると思います。体外受精の実際については別項で。 |
